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民報5 <疑似体験>あなたは喪主です   その5
2010 年 5 月 25 日
突然の悲報に悲しむ間もなく、使い古した脳細胞に鞭をくれ、考えあぐねた結果のとりあえず論に一人満足をしながら、死合わせ葬儀社の遺体搬送車で家路につく「あなた」の耳元に、囁きにも似た質問がぼそっ・・・
御安置するお部屋は決まっておりますか?
片付いてらっしゃいます?ご遺体のお戻しは玄関から?それとも裏口や縁側からにします?(またここでも質問攻めかいな、やれやれ、な~んにも考えてないなんて言えないねこりゃ)
あーはい、はい、はいと口をつく空返事
ご当家の宗旨宗派はご存知ですか?
あーはい・・は?はーーーーー??
はー?ではなく、あの、宗派ですね、しゅうは、お寺さんですよ
あー毎朝天井近くの棚にご飯とお水あげて、ぱんぱんってやる、あれのことけ?
いやそれは神棚ですって・・お仏壇、ございます?ご先祖代々のお位牌が入ってるやつ
あーーあれね、あるある そんならそうと早く行ってくれや~あるよ、うん、あるぞ。
なに宗でしょうか?
え?
ご宗派、なに宗でいらっしゃいます?
し、宗派ね・・(そんなこと知るわけねーだろ)え、えーーーーと・・・万葉集!
残念ながらそんな宗派ありませんっ
えー!葬儀屋の癖にしらねーんか万葉集?
ひととせに、なぬかの夜のみ逢ふ人の、恋も過ぎねば、夜は更けゆくも・・ってな
柿本人麻呂、いいねー
(この喪主さん、変なトコ賢いなぁ)
まぁよろしいです。ご自宅に伺ったときお仏壇を拝見できればそれでご宗派は判りますので・・・ところでご親戚は何名様ほどでしょうか?
人類みな兄弟!
(だめだこりゃ。この話は後にしよう)
そうこうしているうちに、故人様、ご自宅にご到着です。閑静な住宅街に不釣合いな寝台車、家の中を出たり入ったりの家人にそれっぽい服装の人物がうろうろうろうろ・・しまいには白布でくるまれた人間状の物体がストレッチャーに載せられて車から降りてくりゃ、あーっと言う間に近隣に知れ渡ること間違い無しです。そんなこととは露知らず、あたふたと部屋を片付け、当面不要そうなガラクタはどんどんその部屋の押入れの中につめこんで無理やり閉めるもんだから扉の形もそっくり返ってしまう始末です。
やれやれなんとか片付いたし布団も敷けた。それじゃぁ葬儀屋さん、お願いします
この部屋に寝かせたいんです・・・

おかえりなさい、故人様・・・・・
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